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インプラントの寿命は?寿命に個人差がある理由&長く使うコツ
インプラントとは、歯を失った顎の骨に人工歯根を埋め込む治療法です。
大掛かりな外科的手術が必要になりますが、手術後は違和感なく快適に過ごせるのが特徴の治療法です。
継続的に長く安心して使用できるというメリットもあるインプラントですが、寿命は何年くらいが目安になるのでしょうか。
インプラントの一般的な寿命と、寿命を長くするためのコツについてお話します。
インプラントの寿命
インプラントは、10~15年の累積生存率は上顎で約 90%程度、下顎で 94%程度であるといわれています。
インプラント治療をした患者さまの9割以上が、10~15年インプラントを使い続けています。
20年以上インプラントを使い続ける方もいますし、亡くなるまで使う方もいます。
インプラントの寿命にこのような個人差が生じるのは、患者さまの口腔衛生状態や全身の健康状態が関係しているからです。
より長くインプラントを使いたいのであれば、適切なメンテナンスが必要になります。
他の治療法との寿命比較
歯を失った際の治療法は、インプラントだけではありません。
ブリッジや入れ歯といった選択肢がありますが、寿命を比較するとこのようになります。
インプラント | 10年以上 |
---|---|
ブリッジ | 6~8年程度 |
入れ歯 | 5年程度 |
ブリッジや入れ歯と比較すると、インプラントの寿命が長いものであるとわかります。
費用がかかり、手術の負担もありますが、インプラントは長く快適に過ごせるものであるといえるでしょう。
インプラントの寿命が縮む原因
インプラントの寿命が縮む6つの原因をご紹介します。
インプラントの手術前から手術後の生活が、インプラントの寿命に大きく影響するとわかります。
- インプラントそのものの質
- メンテナンス不足
- インプラント周囲炎
- 料金で歯科を決定させた
- 歯ぎしりや食いしばりといった癖
- 喫煙
インプラントそのものの質
インプラントのメーカーは複数あり、多くの製品があります。
自分の体に合うものを選ぶのはもちろん、成功率や残存率が高い製品を選ばなくてはいけません。
例えば人工歯に使用されるセラミッククラウンという素材は、審美性に優れていますが、割れやすいという特徴があります。
メリットとデメリットを正しく理解し、どのように治療を進めていくのか、丁寧に話し合っておきましょう。
メンテナンス不足
インプラントの寿命を左右する大きなポイントは、メンテナンスです。
インプラントは虫歯にはならないため、メンテナンスはあまり重要ではないと勘違いしている患者さまもいるかもしれません。
しかし適切なメンテナンスを行わなければ、口腔内での不具合が起きてしまう可能性があります。
メンテナンスを定期的に行っていれば、自覚症状がなかったとしても医師が違和感に気づけるかもしれません。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎とは、インプラントとその周囲の骨組織に影響を与える細菌による感染症です。
天然の歯とは違い、インプラントは人工歯根なので炎症への抵抗力が低くなります。
インプラントの歯周病というイメージの感染症で、進行するとインプラントを支えられなくなり、いずれ抜けてしまいます。
インプラント周囲炎を防ぐためには、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
料金で歯科を決定させた
インプラントは治療費が高額になりますので、料金が歯科選びのポイントになるという患者さまも少なくないでしょう。
しかしインプラントの治療費が安い理由は何なのかをきちんと見極めるべきです。
いわゆる格安インプラントが成り立つ理由として、以下のような要因が考えられます。
- 国内未承認のインプラントを使っている
- 問診やカウンセリングがない
- 医師の経験値が浅い
このような理由が考えられますので、料金だけで歯科を選ばないように注意しましょう。
歯ぎしりや食いしばりといった癖
歯ぎしりや食いしばりといった日常的な癖は、患者さま自身が無意識で行っている場合があります。
「やめたい」と思っていたとしても、なかなかやめられないかもしれません。
歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに機械的ストレスを与え、破損や炎症を起こすリスクがあります。
ナイトガード(マウスピース)を使用する、姿勢や睡眠の改善といった生活習慣の指導をしていく場合もあります。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある患者さまが、インプラント治療を受けられないというわけではありません。
喫煙
喫煙習慣がある患者さまは、喫煙しない患者さまと比較するとインプラントの寿命が短くなる傾向があります。
非喫煙者のインプラント脱落率が3.56%なのに対し、喫煙者のインプラント脱落率は7.14%というデータがあります。
喫煙しているとインプラントと骨が結合するのに時間がかかりますし、虫歯や歯周病のリスクも高くなります。
治療前に医師から説明がありますので、治療前から喫煙を制限していきましょう。
インプラントの寿命を延ばすために
インプラントの寿命は、患者さまの環境により大きく左右されます。
寿命をできるだけ延ばすためには、以下のような点に留意するようにしましょう。
- 術前の計画
- インプラント体の選択
- 技術が確かな医師を選ぶ
- 毎日のセルフケア
- 定期的なメンテナンス
術前の計画
インプラントの寿命を延ばすためには、術前の精密な評価と計画が欠かせません。
喫煙習慣など指摘する点がある場合には、患者さまご自身の認識を変えていただく必要があるかもしれません。
目に見える部分だけでなく、健康状態や顎骨の量などについても診断し、治療計画を立てていきます。
信頼できる歯科を選び、納得できる治療の計画を立てていきましょう。
インプラント体の選択
インプラント体は、いくつかのメーカーから多くの製品が発売されていますが、耐久性があり安全性が高いものを選ばなくてはいけません。
体に合うもの、実績のあるメーカーを選び、できるだけ長く使用できるようにしましょう。
インプラントの寿命という意味だけでなく、日常的な生活をしていく上でもインプラント体の質は重要です。
高品質なインプラント体は、毎日の咀嚼圧や口腔内の環境による影響を抑え、長く機能性を維持していけます。
技術が確かな医師を選ぶ
言うまでもなく、インプラントの手術には確かな技術が必要です。
正確なインプラント配置や角度を選定していかなければいけませんので、知識だけでなく経験の豊富さも求められます。
また患者さまの体への負担を最小限に抑えられるか、といった配慮も欠かせません。
長期的にインプラントの機能性を維持させていくためには、信頼できる医師を選びましょう。
毎日のセルフケア
口腔環境を整えるために、毎日のセルフケアが欠かせません。
定期的なメンテナンスだけでなく、毎日の基本的なブラッシングがインプラント周囲炎などのリスクを軽減させます。
インプラントにダメージを与えない毛先が柔らかい歯ブラシを選び、丁寧に歯磨きをします。
デンタルフロスなども適宜使いながら、清潔な口腔環境を維持できるようにしましょう。
定期的なメンテナンス
毎日のセルフケアと共に大切なのが、定期的なメンテナンスです。
メンテナンスではインプラントの検査だけでなく、歯科医師または歯科衛生士による口腔内のお掃除、嚙み合わせの調整などをしていきます。
一般的にはインプラント手術の直後はメンテナンスの間隔が短く、だんだん少なくなっていきます。
回数が減ってもメンテナンスがなくなるわけではなく、年2~4回のメンテナンスが最低でも必要です。
インプラントの寿命のサイン
もしインプラントの寿命がきたら、患者さま自身でもこのような異変を感じるでしょう。
- インプラント周囲の腫れや痛み
- 咀嚼時の不快感や痛み
- インプラントがグラグラする
このような異変を感じたら、すぐに受診しましょう。
インプラント周囲の腫れや痛みといった炎症が疑われる場合、早めに処置をすれば改善できるかもしれません。
インプラントの寿命がくると、一般的には再手術を行います。
交換する際には丁寧な診察が必要なので、早めに受診し相談するようにしてください。
寿命がきたインプラントを使い続けると
もし寿命がきたインプラントをそのまま使い続けていると、どのようなリスクがあるのでしょうか。
- インプラントが脱落する
- 痛みが生じる
- 再手術できなくなる
- 隣接する健康な歯への影響
- 嚙み合わせに問題が生じる
インプラントが脱落する
インプラントの寿命を過ぎても使い続けていると、インプラントが脱落する可能性があります。
インプラントが脱落したら、インプラント周囲炎が起きている可能性があります。
歯茎に炎症が起こっていると、インプラントの再治療をする際の顎への負担が懸念されます。
再治療の選択肢が狭くなってしまうかもしれませんので、早めに受診しましょう。
痛みが生じる
インプラント周囲炎で寿命を迎えたインプラントは、放置していると痛みが生じます。
口の中が傷むのと不快感を感じますので、日常生活でも支障が出てくるでしょう。
食事や会話という口を使う場面だけでなく、何もしなくても痛みを感じるようになるかもしれません。
再手術できなくなる
インプラントが寿命を迎えた後の、一般的な選択肢は再手術です。
しかしインプラントのメンテナンスをしていないと、「顎骨の質が低下する」「十分な骨量が失われる」という状況になります。
「1回インプラントの手術をしたから次も絶対にできる」というものではなく、やはり安全に手術ができるかの判断が必要になります。
次の治療を考えているのであれば、早めに受診するべきです。
隣接する健康な歯への影響
インプラントの寿命を放置していると、健康な歯茎や歯槽骨といった歯周組織に、深刻なダメージを与える危険もあります。
不安定になったインプラントは、隣接する健康な歯にストレスをかけます。
インプラント周囲炎は、隣接する歯に感染するリスクがあります。
「インプラントだから」「自分の歯だから」という線引きはなく、同様に丁寧なメンテナンスが必要です。
嚙み合わせに問題が生じる
例えば、インプラントの被せ物の損傷を放置していると、嚙み合わせに問題が生じるかもしれません。
最初は気にならないかもしれませんが、顎関節に負担がかかり、ひどくなると頭痛や肩こり、腰痛の原因になる場合があります。
また食事の際には咀嚼に影響が出ますので、消化不良や胃腸トラブルが起こる可能性もあります。
嚙み合わせは虫歯や歯周病のリスクを高める原因でもありますので、「たかが噛み合わせ」と侮れません。
ちょっとした噛み合わせのズレが、全身の不調を招く恐れがあります。
まとめ
インプラントの手術をした9割以上の人が、インプラントの人工歯を10~15年使い続けています。
「インプラントは寿命がない」「インプラントは一生もの」と耳にするかもしれませんが、これは正しいともいえるし、間違っているともいえます。
インプラントをした患者さまの中には、亡くなるまでインプラントを使用する人がいるからです。
インプラントは「必ず〇年で寿命がくる」というものではありません。
できるだけ寿命を長くするためには、定期的なメンテナンスと毎日のセルフケアが大切です。
違和感を感じたら早めに受診し、問題解決できるようにしておきましょう。
自分の歯で好きなものを食べるのは、当たり前のようですが、とても幸せなことです。
1日でも長く、この幸せを感じられるよう、適切なセルフケアを行っていきましょう。